【2026年施行】日本版DBSにおける「不適切な行為」とは?判断基準と実務対応を行政書士が解説
日本版DBSにおける「不適切な行為」の定義や判断基準(支配性・継続性・閉鎖性)を前回に引き続き行政書士が解説します。具体例・重大行為の判断・事業者の実務対応まで網羅し、2026年施行に向けた準備がこれでわかります。
1、日本版DBSの本質は「犯罪チェック」ではない
日本版DBS(こども性暴力防止法)の本質が単なる「犯罪チェック」にとどまらない理由は、この制度が「性犯罪歴の確認」を入り口としつつ、組織全体でこどもを性暴力から守るための包括的な仕組み(安全確保措置)の構築を目的としているからです。具体的には、以下の4つの観点からその本質を理解することができます。
①「犯罪」以前の「不適切な行為」からの未然防止
②「過去の犯罪者」だけでなく、「初犯」を防ぐ仕組み
③早期発見の」ための継続的なモニタリング
④「おそれ」に基づく迅速な保護(被害児童ファースト)
今回は、①の「不適切な行為」について考えてみましょう
2、「不適切な行為」とは?
「こども性暴力防止法」および関連する指針(横断指針・ガイドライン)において、**「不適切な行為」**とは、行為そのものは直ちに児童対象性暴力等には該当しないものの、業務上必ずしも必要ではなく、継続・発展することで性暴力につながり得るリスクのある行為と定義されています。
これらは児童の人としての尊厳を侵害し得るものであり、この段階で適切に対処することが、性暴力の未然防止(エスカレーションの阻止)において極めて重要であるとされています。
3、「不適切な行為」の具体例
何が不適切にあたるかは事業の特性や児童の状況によりますが、以下の状況が考えられます。
⑴私的なコミュニケーション・面会・送迎等
- 児童と私的な連絡先(SNS、オンラインゲーム、メール等)を交換し、私的にやり取りする。
- 休日や放課後に、児童と二人きりで私的に会う、または自宅に招く。
- 保護者の承諾なく、児童の自宅で二人きりになる、または一人で車に乗せて送迎する。
⑵不必要な身体接触・密室状況
- 不必要な接触(必要以上の長時間の抱擁、一般的でない抱き方など)。
- 業務上必要ないのに児童を膝に乗せる、おんぶする、マッサージをする。
- 用件がないのに別室に呼び出すなど、不必要に密室で二人きりになろうとする。
⑶介助・更衣・撮影における配慮不足
- 児童が自分でやりたい意思を示しているのに、わざわざ入浴、排泄、着替え等の介助に入る。
- 不特定多数の人の目がある中で児童に更衣をさせる。
- 私物のスマートフォンやルール外の方法で、児童の写真・動画を撮影・管理する。
⑷特別扱い・プライバシー侵害
- 特定の児童に高価な金品を与えたり、容姿を過度に褒めたりする。
- 従事者が児童の前で過度に肌を露出する(児童の警戒心を解く「性的手なずけ」につながる可能性)。
4、「重大な不適切な行為」の判断基準
不適切な行為のうち、以下の悪質性を高める要素が加わった場合は、実際に性暴力が行われた場合に準じた厳しい対応が求められる「重大な不適切な行為」と判断されます。
- 「執拗に」行われること。
- 「児童や保護者の意に反することを認識しながら」行われること。
- 加害認識の有無や、児童に与えた被害の重大性を踏まえて合理的に判断されるもの。
5,判断における留意点
実は・・・、不適切な行為に該当するかどうかは、全ての事業者で一律に判断されるものではなく、いろんな複合的な要素によって変わってきます。
- 児童の発達段階・特性:未就学児への信頼関係構築のためのスキンシップと、中高生への接触は同等には扱われません。
- 事業の特性:スポーツ指導(水泳、バレエ等)における必要な身体接触などは、保護者の理解を得た範囲であれば許容され得ます。
- 現場の状況:日常的な送迎と、災害時などの緊急事態における送迎は区別されます。
それぞれの場面と、それぞれの事情を考慮しながら、繊細かつ公正な判断が求められます。
6、事業者に求められる対応とは?
事業者は、調査の結果、不適切な行為が行われたと合理的に判断した場合には、「性暴力が行われるおそれがある」防止措置を講じる義務があります。
- 初回かつ比較的軽微な場合:繰り返さないよう指導や研修受講を命じ、注意深く経過観察を行います。
- 重大な場合、または指導しても繰り返す場合:原則として、その従事者をこどもと接する業務から外す(配置転換等)必要があります。
事業者はあらかじめ、服務規律等で不適切な行為の範囲を明確に定め、従事者、児童、保護者に周知徹底しておくことが求められています。
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