成年後見の改正で「一度始めたら一生」が変わる?本人の気持ちを尊重する新しい制度へ
-1024x683.png)
「最近、親の物忘れがひどくて、銀行の手続きや契約が心配……」
「障害のある子どもの将来、自分たちがいなくなった後が不安」
こうした悩みを抱えたとき、頼りになるのが成年後見制度です。判断する力が弱くなった方に代わって、信頼できる人(後見人など)が財産の管理や契約のサポートをしてくれる仕組みです。
この成年後見制度が、大きく見直されることが決まりました。しかも今回は、制度の根っこを変えるレベルの「抜本改正」。「3つあった制度が1つになる」「一度始めたら一生続く、が変わる」など、これまでの常識がガラッと変わる内容です。
この記事では、法律の知識がない方にもわかるように、「今までと何がどう変わるのか」を、家族目線でやさしく整理していきます。
※この記事は、可決・成立した直後の内容に基づいて書いているため、詳細な内容や施行(実際にスタートする)時期は、まだ確定情報がないことをあらかじめご了承ください。
そもそも成年後見制度って?(1分でおさらい)
成年後見制度は、認知症・知的障害・精神障害などで「契約や財産管理の判断が難しくなった方」を法的に支える仕組みです。
今の制度(現行制度)では、本人の判断能力の程度に応じて3つのタイプに分かれています。
| タイプ | 対象となる人のイメージ |
|---|---|
| 後見 | 判断する力をほとんど欠いている状態の人 |
| 保佐 | 判断する力が「著しく不十分」な人 |
| 補助 | 判断する力が「不十分」な人(比較的軽い) |
重い順に「後見>保佐>補助」というイメージですね。家庭裁判所が「この人は後見」「この人は保佐」と振り分け、それぞれ後見人・保佐人・補助人がつく――これが今までの形でした。
今回の改正、最大のポイントは「3つ→1つ」
ここが今回いちばん大きな変化です。
これまでの「後見・保佐・補助」という3つのタイプを廃止し、「補助」という1つの制度に統合する――これが改正案の核心です。
イメージでいうと、これまでは「重症・中等症・軽症」で3つの別々の入り口があったのを、まず「補助」という1つの入り口で全員を受け止め、その人に本当に必要なサポートだけを後から足していくという発想に変わります。
これにあわせて、「成年被後見人」「被保佐人」といった呼び名も、法律で定める後見では使われなくなります。「重い・軽い」でレッテルを貼るのではなく、一人ひとりに必要な支援を組み立てるという考え方への転換です。
変更点を、ひとつずつやさしく解説
① 本人の権利を「奪いすぎない」制度へ
実は、これまでの制度には「本人の権利を制限しすぎる」という大きな批判がありました。
今までは、後見が始まると、本人がした契約などは(日用品の買い物などを除いて)原則すべて後から取り消せる仕組みでした。つまり、本人が自分で何かを決めても「無効にできてしまう」状態。これは本人の自由をかなり広く制限することになります。
改正後は、補助が始まっても、それだけでは本人の権利は制限されません。取り消せるのは、家庭裁判所が「この行為については本人だけで決めず、補助人の同意が必要」と個別に定めた特定の行為などに限られます。
「必要な部分だけ、最小限に支える」――本人の自己決定をできるだけ尊重する方向へ舵を切った、ということです。
② 判断能力が重い人には「特定補助人」
「でも、判断する力をほとんど失っている人は、しっかり守ってもらわないと困るのでは?」と思いますよね。
そこで新たに登場するのが「特定補助人」という仕組みです。
判断する力をほとんど欠いている重いケースでは、家庭裁判所が「特定補助人」をつけることができます。特定補助人は、
- 広い範囲での取消権(本人を守るために契約を取り消せる権限)
- 本人の財産の調査や財産目録の作成
- 本人あての郵便物の管理
など、これまでの成年後見人に近い強い権限を持ちます。
つまり「補助」という1つの器の中で、軽い人から重い人まで切れ目なく対応できるよう設計されているわけです。
③ サポートの中身は「オーダーメイド」
補助人がどこまでサポートするかは、その人の状況に合わせて家庭裁判所が個別に決めます。
- 同意権・取消権……特定の行為に限ってつける
- 代理権(本人に代わって契約などをする権限)……特定の手続きに限ってつける(※本人以外の人が申し立てる場合は、本人の同意が必要)
「全部おまかせ」ではなく、必要なものだけを選んで付け足す、まさにオーダーメイドの支援です。
④ 「本人の気持ちを聴く」ことが義務に
改正案では、補助人に対して、
- 本人にきちんと情報を伝える
- 本人の意見・希望を聴く
- そうやって把握した本人の意向を尊重する
ことが求められるようになります(任意後見人にも同様の規定が新設されます)。
「本人のためだから」と支援者が勝手に決めてしまうのではなく、本人の声に耳を傾けることがルールとして明記されるのは、大きな前進といえます。
⑤ 「一度始めたら一生」を見直す仕組み
今の制度の悩みの一つが、いったん後見が始まると、原則として本人が亡くなるまで続いてしまう点でした。状態が良くなっても途中でやめにくい、という声があったのです。
改正後は、
- 補助人は毎年1回、家庭裁判所に本人の状況を報告する
- 家庭裁判所は、状況に応じて権限を縮小したり、必要がなくなれば制度そのものを終了できる
という形に変わります。本人の状態の変化に合わせて、支援を増やしたり減らしたり、やめたりできるようになるわけです。
⑥ 使いやすさもアップ
- 法人による後見や複数人での後見が、正式に制度として位置づけられます(社会福祉法人や複数の親族で支える、といった形が取りやすくなります)。
- 本人が元気なうちに、「将来、後見の開始を申し立ててほしい人」を公正証書で前もって指定できる仕組みも新設されます。自分の意思を先に残しておけるということです。
「任意後見契約」もここが変わる
元気なうちに「将来お願いする人」を自分で決めておく任意後見契約も、あわせて見直されます。
- 効力が発生するタイミングが、これまでの「監督人が選ばれたとき」から「任意後見を開始する審判があったとき」に変わります。
- これまでは必ず「監督人」をつける必要がありましたが、その必要が明らかにない場合は監督人をつけなくてもよくなります。
- 複数の人を受任者に立て、優先順位などを決めておける「不開始の合意」という仕組みも新設されます。
- 任意後見契約が登記されている場合、家庭裁判所が法定の「補助開始の審判」(特定補助を含む)をするには、「本人の利益のため特に必要がある」と認めるときに限定されるという原則が改めて明文化されました。これは、本人が自ら選んだ任意後見人を優先し、どうしても足りない部分(任意後見人にはない取消権が必要な場合など)があるときにのみ法定の補助(旧来の後見・保佐相当を含む)を重ねて利用(併用)できるという仕組みです
全体として、より柔軟に・使いやすくなる方向の見直しです。
この改正で、私たち家族の生活はどう変わる?
プラスに期待できる点
- 本人の自由(自分で決める権利)がこれまでより尊重される
- 「重い・軽い」で機械的に振り分けられず、必要な支援だけを受けられる
- 状態が良くなれば途中で見直し・終了できる
- 法人や複数人での支援がしやすく、家族だけで抱え込まなくてよくなる
注意しておきたい点
- 制度が柔軟になる分、「自分の家族にはどの支援が必要か」を考える場面が増えそう
- 毎年の家庭裁判所への報告など、運用の詳細は今後の情報を確認する必要がある
- いま現に後見・保佐・補助を利用している方への取り扱い(移行のルール)は、別途定められる見込み
よくある質問(Q&A)
Q1. 今、親が「成年後見」を利用中です。改正されたらどうなりますか?
すでに利用している方をどう新制度へ移すかは、現時点ではまだ未定とお考えください。詳細が出たら必ず確認しましょう。
Q2. いつから始まるのですか?
施行時期はまだ確定していませんが、公布後、2年6か月以内に施行される模様です。今後の国会審議や公式発表を確認してください。
Q3. 費用はどのくらいかかりますか?
申立ての費用や後見人への報酬などの具体的な金額は、本記事の範囲では確定情報がありません。家庭裁判所や専門家にご確認ください。
Q4. 結局、いちばん大きな変化は何ですか?
「後見・保佐・補助の3つが『補助』に一本化されること」と、「本人の権利をできるだけ制限せず、必要な支援だけを行い、定期的に見直す制度になること」の2点です。
Q5. 何か今のうちに準備できることは?
元気なうちに任意後見契約を検討したり、家族で「もしものとき誰に・何をお願いしたいか」を話し合っておくことが、いちばんの備えになります。
まとめ:本人らしさを大切にする制度へ
今回の成年後見制度の改正を、ひとことでまとめると――
「重い・中間・軽いで制度を分ける」これまでの形から、「まず『補助』で受け止め、その人に必要な支援だけを行い、状態の変化に合わせて見直していく」制度への転換
です。本人の権利と気持ちをこれまで以上に尊重する、やさしい方向への見直しといえるでしょう。
一方で、制度が柔軟になる分、「自分の家族にはどんな支援が合うのか」を一緒に考えていくことがこれまで以上に大切になります。
個人的には成年後見の今回の改正は、必要以上に本人の権利を制約していたことによる本人・親族間とのトラブルや、必要以上の経済的負担の軽減、また一定条件での範疇ではありますが、ご本人が亡くなられた後の事務手続きを、相続人が確定するまで補助人が対応できるようになったこと。さらに任意後見制度の審判制による監督人と後見人との「2重支払い」を回避できる可能性が生まれ、経済的負担の軽減ができる可能性ができたこと(すべての任意後見が監督人不要ではないので、そこはご注意いただきたのですが)、補助人との必要最小限での併用が可能になったことによって、任意後見では不十分だったサポートができるようになり、今まで二の足を踏んでおられた方々の問題がある程度解消されていくのではないかと考えます。
成年後見の利用を検討するときは、ぜひ早めに専門家や、お住まいの地域の家庭裁判所に相談してみてください。一人で抱え込まず、専門家と一緒に「その人らしい暮らしを支える形」を見つけていきましょう。
初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
📞 070-3626-8000(平日 10:00〜19:00)
✉️ tanuichiroukaettekita@gmail.com
🔗 お問い合わせフォームはこちら