善意だけでは、こどもを守れない。子どもの安全を支える3つの法律とは
はじめに
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2026年12月、日本版DBS(こども性暴力防止法)がついに施行されます。
この法律が施行されると、学習塾やスポーツクラブ、放課後等デイサービスなど、子どもに関わる多くの業種で、職員の採用時に犯罪歴などの確認が義務化されることになります。
しかし、皆さんご存じでしょうか?子どもを守る法律は、日本版DBSだけではないということを。
実は、現在、日本には以下の3つの法律が、それぞれ異なる役割を担いながら、子どもの安全を守っているんです。
- 児童福祉法 ─ 発見・保護の法律
- 教職員性暴力防止法 ─ 再発防止の法律
- 日本版DBS(こども性暴力防止法) ─ 未然防止の法律
この3つの法律がどのような役割を果たしていて、どのようにつながっているのか、具体的にご説明していきます。
第1章:児童福祉法は「発見・保護」の法律
児童福祉法が担う4つの役割
児童福祉法の本質は、以下の4つのステップにあります。
- 発見 ─ 子どもの虐待や異変に気づく
- 通告 ─ 児童相談所や学校に報告する
- 保護 ─ 子どもを危険から守る
- 支援 ─ 子どもと家族をサポートする
この法律が他と決定的に異なる特徴があります。それは、「虐待が確定していなくても動く」という点です。
「疑い」の段階で動く法律
児童福祉法は、「子どもが虐待されているのではないか」という疑いの段階で報告・対応することができます。
たとえば、学習塾の講師が「この生徒、いつもお腹が空いているみたいだし、服も汚れたままだな」と感じたら、その段階で児童相談所に通告することができるのです。
確実な証拠がなくても、「なんか心配」という直感が大切なんです。
子どもの異変を早期発見する「場」の重要性
学校、学習塾、放課後等デイサービス、スポーツクラブ、放課後児童クラブ(学童保育)─ こうした施設は、子どもたちが日常的に過ごす場所です。
だからこそ、ここで働く大人たちが子どもの異変に気づくことが、極めて重要になります。
担当者の皆さんは、法律を「守らなければいけないもの」と考えるのではなく、「子どもたちの安全を守る最前線の目」として、児童福祉法を活用してください。
第2章:教職員性暴力防止法は「再発防止」の法律
なぜこの法律ができたのか
数年前、全国で教職員による性暴力事案が大きく報道されました。
その衝撃から、「過去に性暴力を起こした人が、別の学校や別の地域で再び教職に就く」ということが起きていることが明らかになったのです。
その防止を目的として、教職員性暴力防止法が作られました。
「前科」ではなく「行政処分歴」を確認する
ここで大切なポイントがあります。
この法律で確認しているのは、「前科」ではなく「行政処分歴」です。
つまり、裁判所の判決ではなく、教育委員会による処分(免職、失職など)の履歴を確認しているのです。
具体的には、「この先生は、過去に生徒への性暴力で免許を失った人ではないか」を調べるためのデータベースが、全国で一元管理されています。
「再発防止」という考え方
この法律の役割は「未然防止」ではなく「再発防止」です。
言い換えれば、「過去に過ちを犯した人が、もう一度その過ちを繰り返さないようにする」ための制度なのです。
第3章:日本版DBSは「未然防止」の法律
単なる犯罪歴確認制度ではない
日本版DBS(こども性暴力防止法)と聞くと、「犯罪者を除外する制度」と思う方が多いかもしれません。
ただし、これは間違いではありませんが、全体像ではありません。
日本版DBSには、以下の6つの要素が含まれています。
- 犯罪事実確認 ─ 性暴力やこども虐待の有罪判決がないか
- 安全確保措置 ─ 認定機関での防止措置の実施
- 相談体制 ─ 困ったときに相談できる環境整備
- 通報体制 ─ 問題が起きたときの報告ルール
- 研修 ─ 職員の継続的な教育
- 不適切な行為の防止 ─ セクハラやパワハラなどの防止
つまり、日本版DBSは「人を選別する制度」ではなく、「組織全体で子どもを守る制度」なのです。
どの機関が対象になるのか
2026年12月の施行に向けて、以下の機関で日本版DBSの認定制度が設けられます。
- 学習塾 ─ 民間の教育施設
- フリースクール ─ 学校以外の学習支援機関
- スポーツクラブ ─ 子ども向けのスポーツ教室
- 放課後児童クラブ(学童保育) ─ 授業後の子どもの預かり施設
- その他、子どもに関わる様々な民間施設
「教育・保育・福祉の現場で働く大人たち」が、共通の認定基準をクリアすることで、子どもを守るネットワークが形成されるわけです。
第4章:3つの法律はどうつながっているの?
防御ネットワークとしての3つの法律
ここまで3つの法律について説明してきましたが、実は、これらは独立しているのではなく、層状に重なり合った防御ネットワークを形成しています。
たとえるなら、こんな感じです。
第1層(児童福祉法):警報と対応
- 子どもの異変に気づいて通告する
- 子どもを発見して守る
第2層(教職員性暴力防止法):前科者の管理
- 過去に過ちを犯した人の履歴を確認する
- 再発防止に焦点を当てる
第3層(日本版DBS):未然防止と組織文化
- 犯罪歴を確認して、採用段階から防止する
- 組織全体で安全文化を構築する
「善意だけでは守れない」理由
子どもを守ることは、大人の「善意」だけでは足りません。
なぜなら、以下の3つの理由があるからです。
- 人間の目には限界がある ─ 気づかない虐待や暴力がある(児童福祉法が必要)
- 人間の記憶は不確実である ─ 過去の問題を忘れてしまう可能性がある(教職員性暴力防止法が必要)
- 個人の判断だけでは足りない ─ 複数の目による確認と、組織的な対応が必要(日本版DBSが必要)
この3つの法律が相互に補完し合うことで、初めて「社会全体で子どもを守る防御網」が完成するのです。
終わりに:これからの私たちの役割
今、日本は子どもを守るための法的環境が整いつつあります。
学習塾経営者、放課後等デイサービスの職員、学童保育の運営者、保育事業者、フリースクールの指導者、スポーツクラブのコーチ、そして子育てをしている保護者の皆さん。
私たちは皆、この防御ネットワークの一部です。
制度や法律は、あくまで「ツール」に過ぎません。最も大切なのは、「子どもを守る」という強い意志と、その意志に基づいた行動です。
児童福祉法で「疑ったら通告する勇気」を、教職員性暴力防止法で「過去を確認する必要性」を、日本版DBSで「組織全体の責任」を、それぞれ学びました。
これからの時代、私たちは3つの法律を「理解する」だけではなく、実際に「使う」必要があります。
子どもの笑顔を守るために。
子どもの未来を守るために。
善意に法制度を組み合わせることで、初めて子どもたちの本当の安全が実現するの